佐藤 優 (2006/01/18)
ナショナリズムの世界では、より過激な見解がより正しいことになる
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大使館幹部たちがゴルバチョフ派を重視していたので、
私は「落ち穂拾い」として、
共産党守旧派とエリツィン派、
つまり左右両極と深い付き合いをしていた
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ソ連ではマルクスが『ヘーゲル法哲学批判序論』で述べた
「宗教は人民のアヘンである」という規定を基本に
科学的無神論教育を徹底していたので、
共産党幹部のキリスト教に関する知識はひじょうに浅薄なものだった
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ロシア共産党守旧派の政治家たちは、
日本の自民党の政治家に似ている。
人間関係を大切にし、
物事は何であれ事前に根回しをする体質をもっていた
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ゴルバチョフ派の党官僚には信念がなく、
時流を見るのに長けた連中が多すぎる。
霞が関の小狡い官僚に似ている
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バルト諸国の民族主義者や
エリツィンの周囲に集まっていた急進民主改革派の人びとは
ことばと行動が分離していないので好感がもてた
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ロシア人は原理原則を譲らない外国人を尊敬する
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普段は市内の至る所に立っている交通警官も姿を消し、
権力の空白が生じつつあることを肌で感じる
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私はいちばんしつこく追いかけてくる記者を大切にすることにした
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政界が「男のやきもち」の世界であることを
私はロシアでも日本でも嫌というほど見てきた
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ジグソーパズルを周囲から作っていき、
最後に真っ黒い穴を残し、
『ここに入りなさい』という検察のやり方にはなかなかついていけない
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外交の世界において、
論理構成は、
その結論と同じくらい重要性をもつ
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東海道をいくら進んでも大井川を越えることができないので、
日本政府は今度は中仙道から京都に行くことを考えた。
これが「川奈提案」だ
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政治家と官僚では、
文化も行動の基礎となる「ゲームのルール」も大きく異なる
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それにしても外務省が組織的に怪文書作りをし、
幹部がそれを配布しているというのは、
私にとって衝撃だった。
外務省という組織が崩れはじめていた
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田中女史が国民の潜在意識に働きかけ、
国民の大多数が「何かに対して怒っている状態」が続くようになった。
怒りの対象は100パーセント悪く、
それを攻撃する理論は100パーセント正しいという
二項図式が確立した
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専門家以外の人にとって、
イスラエルとロシアが特別な関係にあることは
なかなかピンとこないにちがいない
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十九世紀半ば、
ドイツ知識人の小さなサークルで始まった思想運動は、
一つはマルクス主義になって、
ソ連、東欧、中国の社会主義諸国を生み出し、
もう一つが後期モーゼス・ヘスを経由してシオニズムとなり、
イスラエル建国につながったと見ることも可能なのである
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ユダヤ人は母系を原則とする。
すなわち、母親がユダヤ人ならば、
その子は無条件にユダヤ人なのである。
従って、苗字だけでは、
ユダヤ人か否かがわからない場合が多い
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ロシアウォッチャーにとって、
大晦日は重要だ。
ロシアの官公庁は三十一日午前中まで仕事をしている。
昼過ぎに職場でスパークリングワインを開けて、
「よいお年を」と挨拶して帰路につく。
大晦日から信念は友人同士が住宅や別荘に集まって
徹夜で大騒ぎをする。
日付がかわったところで友人に電話をする。
この時に電話がかかってきた人間は
特に親しい関係にあるということだ
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その時必ず話題になるのが
大統領の年末メッセージだ
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同じことでも言い方によって相手側の受け止めは大きく異なる。
例えば、「お前、嘘をつくなよ」と言えば
誰もがカチンとくるが、
「お互い正直にやろう」と言えば、
別に嫌な感じはしない
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日本側の戦略は、
「喉の渇いた人間にコップに半分だけ水を入れて与えると
もっと水が欲しくなる」
というもので、
脳天気に人道支援をしているわけではなかった
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情報はデータベースに入力していてもあまり意味がなく、
記憶にきちんと定着させなくてはならない。
この基本を怠っていくら情報を聞き込んだり、
地方調査を進めても、
上滑りした情報を得ることしかできず、
実務の役に立たない
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また、できるだけ貸しを作り、
借りをつくらないというのが
情報屋の職業文化だ
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私は外交は廃業だと思っています。
私たち外交官のことばが
世界でそれなりの重みがあって受け止められるのも
その背景に日本の経済力があるからです
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人は「好きなこと」と「できること」が違う場合も多い
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二十一世紀にサハリンはロシアのクウェートになる
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実は情報の世界では、
第一印象をとても大切にする。
人間には理屈で割り切れない世界があり、
その残余を捉える能力が情報屋にとっては重要だ。
それが印象なのである
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検察は基本的に世論の目線で動く。
小泉政権誕生後の世論はワイドショーと週刊誌で動くので、
このレベルの「正義」を実現することが
検察にとっては死活的に重要になる
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クラッシュを作ってそれから仲良くなるというのは
政治家がよく使う手法だ
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巷間伝わっている鈴木宗男氏のイメージは、
ネガティブな要素が肥大してしまったので、
到底この世のものとは思えないような大魔王になっているが、
長年、国策捜査を扱った特捜検事には
これが実像から遥かにかけ離れていることくらいは気付いている
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情報操作工作によって、
逆に国民の検察に対する期待値が上がり、
その期待に応えるために
国策捜査で無理をするという循環に
検察が陥っている
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現役時代には、
仕事の関係で付き合いたくない人々とも付き合わなくてはならなかったが、
これで人間関係を一回リセットできるので、
実に爽快な気分だった
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ようやく自分の好きなことを中心に
生活を組み立てることができそうだ。
これからは人間関係を広げずに、
静かに国内亡命者として生きていこうと思った。
もはや時代に積極的に関与していくことはないが、
時代を見る眼だけは持ち続けたいというのが
私の考えだった
〜 『国家の罠』 〜